アンナ〜出会い

28.発作


クラトスとアンナが がけをおりると、心配でウロウロしていたノイシュが怒った声をあげた。

「もう!なにしてたの〜?おそいよお!」

「ごめんね、ノイシュ!ただいま〜!」

地面に足が着いても はなれようとしない二人を見たノイシュは、 つないだ手を見つけると、二人の間にどかっと割りこんだ。

「おかえり、アンナ〜!」

「ノイシュ♪まっててくれてありがとう」

アンナはノイシュに口づけすると、後ずさるクラトスに向かって言った。

「・・・・・あなたの国では、どうやってお礼するの?」

「・・・・・あく手だ。手と手をにぎる」

「じゃあ・・・・・はい!」

アンナは、まっすぐに手を差し出した。クラトスは、ほっとして手をのばし、あく手した。

しかし、アンナは、顔をまっ赤にして身じろぎすると、ぱっと手を引いて胸の前で組んだ。

「うわあ〜。きんちょうする〜!」

「・・・・・どうした?」

「これ・・・・・ルインではね、プロポーズされた時の、オッケーって返事なの」

「なっ、何?」

クラトスも、はじかれたように手を引いた。

「お、おまえがどうするのか聞くから、私は・・・・・・・・・・」

「うふふ。分かってます。だけど、これからは私も気をつけるわ。文化のちがいって、けっこう大変ね」

「・・・・・そうか」

クラトスは、少し安心してため息をついた。

「・・・・・では、ねこにんの里へもどるか」

そう言った時、突然、アンナが顔をゆがめ、そのまま、ゆっくりとその場にくずれ落ちた。

「アンナ!?」

クラトスが かけよった時には、すでにアンナの意識はなかった。顔に血の気がなく、くちびるは紫色に変色して、息をしているかどうかも、見ただけでは分からなかった。

「アンナ!しっかりしろ!・・・・・ファーストエイド!」

アンナに術をかけるが、まったく効果はなかった。

「どうしたというのだ・・・・・?」

あせるクラトスの様子をじっと見ていたノイシュが、とうとう泣きそうな声をあげた。

「クラトス!クラトス〜ッ!アンナを助けて!!!」

「ノイシュ?おまえ、何か知っているのか?」

「クラトスに言っちゃダメって、アンナが・・・・・だけど・・・・・ボク・・・・・ごめんなさい!」

ノイシュはそう言うと、アンナの服のそでをガブリとかんで引っぱり上げた。

「これは・・・・・!!」

アンナのうでは、気味の悪い緑色のウロコで びっしりとおおわれていた。

瞬時にすべてを知ったクラトスは、アンナの体をだき上げた。

(これは・・・・・マーテルと同じ・・・・・ハイ・エクスフィアの拒否反応だ・・・・・ これをおさえるには、あれしかない!)

・・・・・私、要の紋(かなめのもん)はいらないわ

クラトスの耳には、しっかりとアンナの言葉が焼きついていた。自分の命をかけて、 エクスフィアを完成させると言いきったアンナ。

しかし、クラトスは、どうしても彼女の命を救いたかった。 数千年もの長い時間をかけてようやく見つけた希望の光を失いたくなかった。

クラトスは、飛んだ。

彼女を助けるために。

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