アンナ〜出会い

19、アンナをさがして


アンナがクラトスの元を去ってから、早くも1ヶ月がすぎた。 その間、クラトスは必死になってアンナのゆくえをさがしたが、 シルヴァラント中のどの街にもアンナはいなかった。 その上、ノイシュも、いまだクラトスの元へもどらないのだった。

クラトスは、今日もアンナをさがしてイズールドへ来ていた。

(アンナ・・・・・どこにいるのだ・・・・・)

早くアンナに会って、とびきりの笑顔を見たい。彼女の明るい声を聞きたい。

ディザイアンにつかまったということも考えたが、ノイシュがいっしょにいるのだ。それはないだろう。

(だとすれば・・・・・意図的に、私をさけているのか?)

クラトスが考えながら浜辺を歩いていると、不意に呼びかける声があった。

「そこのお兄さん。ねこにん探索(たんさく)は いかがかにゃあ?」

「・・・・・探索?」

はっと目を見張ったクラトスは、何気なく声をかけてきたねこにんにつめよると、低い声でたずねた。

「それは、人間の・・・・・個人もさがせるのか?」

「個人かにゃ?・・・・・う〜ん。お金によってはできると思うにゃあ」

「金に糸目はつけん!」

あまりにクラトスが真剣なので、ねこにんもつられて真剣な顔になった。

「・・・・・どんな人だにゃ?」

「名前は、アンナという。年は20才ぐらいの女性で、こしまでのばした長い茶色の髪をしていて・・・・・」

「にゃっ!」

説明の途中で、ねこにんが声をあげた。

ねこにんは、しっぽをぴんと立てて言った。

「アンニャさんにゃ?知ってるにゃあ!」

「本当か!?どこにいる!」

思わずねこにんの胸ぐらをつかんだクラトスは、ものすごい迫力(はくりょく)でにらみつけた。

「ま、まままってにゃ。くるしいにゃ!この手をはなすにゃあ〜!」

「す、すまん・・・・・」

クラトスがあわてて手を引くと、ねこにんは、こほんとせきばらいして言った。

「・・・・・ところで、アニャタの名前は、にゃんていうにゃ?」

「私は、クラトスという。旅の傭兵(ようへい)だ」

「にゃっ!」

ねこにんが、今度は小さく飛び上がった。

「あにゃたがクラトスさんだっだのかにゃ! 悪いけど、あにゃたに教えるわけにはいかにゃいにゃ。アンニャさんの希望にゃ!」

「あれの希望・・・・・?どういうことだ!」

クラトスの頭に血がのぼる。思わずねこにんをしめあげそうになってしまい、 クラトスは、自分の気持ちを落ち着けようと必死で努力した。

「・・・・・彼女は、私の、命の恩人だ」

クラトスは、できるだけ感情をおさえてそう言った。それが、まったくかざらない彼の本心だった。

「彼女は・・・・・私に教えてくれた・・・・・ずっと忘れていた、大切なことを ・・・・・しかし・・・・・私は、まだ、礼も言っておらぬ。一度だけでいい・・・・・彼女に会いたいのだ」

「・・・・・そうか。わかったにゃ」

ねこにんは、うんうんとうなづいて言った。

「アンニャさんは、ねこにんの里にいるにゃ。だんなさんをディザイアンに殺されて、 一人で赤ちゃんを産む気だにゃ」

「・・・・・何?」

クラトスは自分の耳を疑った。

(出産だと・・・・・?つれあいが殺された・・・・・だと?)

(だからなのか?・・・・・赤子のために、生きる道を選んだのか!)

今すぐにでもかけつけたい。そして、彼女の力になりたい。そう思ったところで、クラトスは動きを止めた。

アンナの夫がディザイアンに殺されたのだとしたら、その責任は自分にあるのではないか。 世の中で起こる悲惨(ひさん)な出来事は、すべて、自分がミトスを止められなかったことに原因があるのだ。

それなのに、どのような顔をして彼女に会えばいいのか。クラトスは、ぼうぜんと言葉を失ってしまった。

(アンナ・・・・・すまない・・・・・!)

くやんでもくやみきれない思いが、クラトスの心をざくりとつらぬく。

せめて、一度だけでいい。アンナに会って、心からわびを言いたい。そして、もし、許されるのなら・・・・・

(アンナ・・・・・!)

クラトスは、はやる気持ちをおさえて、ねこにんの里へと向かった。

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