人を愛するということ

17、シルヴァラントベースにて


「・・・・・それで? 貴様は、結局、何が言いたいわけだ?」

ユアンは、目の前につっ立っているクラトスを いまいましげに にらみつけた。

ユアンとクラトス。二人は、クルシスの大天使として、共にユグドラシルに仕えていた身だ。さらに昔は、世界を救うという目的を持って一緒に旅し、戦った仲間でもある。

ユアンは、シルヴァラントとテセアラ、二つの世界を結ぶ地点である、ここ、シルヴァラントベースの管理を大天使として任されている身でありながら、ベース内に堂々と反逆組織を持ち、800年にもわたって、水面下で活動を続けている策士だ。

また、ユアンにはユアンの考えがあって、彼は、クラトスの命をねらっていた。

しかし、飛んで火に入る夏の虫と思いきや、久しぶりに再会した旧友は、まったくの別人のように変わり果てていた。

ユアンは、クラトスに会う前から分かっていた。

彼が、なぜ、変化したのかを・・・・・

「私は多忙なのだ。貴様のくだらん たわ言を聞いてやる時間など、本来は持ち合わせておらん!」

ユアンはどかりとイスにすわると、いらいらと指でテーブルをたたいた。

「・・・・・無機生命体に、人を愛する資格があるか? バカげた質問だ。・・・・・私の答えを教えてやろう。この世に、愛などいうものは存在せん!」

「・・・・・・・・・・」

クラトスは、おしだまったまま、思いつめた顔をしてユアンの手元を見ている。

ユアンは、つのるいらだちをかくさず言った。

「貴様は、すでに指輪を渡したのだろう?そして、女が受け取った。それで貴様の目的は達成された。一体、どこに不満がある?」

「まさか・・・・・」

ユアンが、何かを思い出したようにクラトスを見た。

「あの女・・・・・生娘では なかったのか?」

「そのような話は関係ない!」

クラトスが反射的にどなった。

ユアンは、まったく動じる様子もなく続けた。

「お前の国では、たしか、指輪をやった後、相手が生娘か調べるのだったな。もし、女に不貞があれば・・・・・死罪、か?」

「ユアン、いいかげんにしろ!」

「そう言いたいのはこっちだ、クラトス」

ユアンは、口のはしを上げて にやりと笑う。

「クラトスよ。悪いがな・・・・・そういった相談は、次回からは、ほれる前に来い」

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