ぺリット物語

16、ブーケ・トスの行方


「???」

みんなの前に立っているのは、ユアンだった。瞬間移動で現れたのだろう。自分の置かれた状態がまったく理解できないらしく、手にしたブーケとクラトスたちを交互に見ながらぼうぜんとしている。

「あ〜!ちっくしょ〜!」

ロイドが、がっくりとうなだれる。

「ま、仕方ないね〜」

しいなも、かたをすくめてコレットを見た。

コレットは、うれしそうに笑ってはく手を送る。

「わあ〜!ユアンさん、おめでとうございます〜♪」

「な、ななななんだ?一体、これはどういうことだ?」

「ユアンさん!お久しぶり!」

アンナが、ユアンにかけよってだきついた。いきなりハグされたユアンが目を白黒させて言う。

「貴様は・・・・・アンナ!?」

「あら?お祝いに来てくれたんじゃないの?」

「だれが!・・・・・私は、そこにいるテセアラの神子によばれて来ただけだ!」

ユアンは必死でアンナを引きはなそうとするが、なにしろつかめる場所がないので、彼の手は空をかくばかりだった。

みんなの視線を全身に受けたゼロスが、かたをすくめて言った。

「オレさまがアンタをよんだ理由は、コレだよ、コレ」

「これ?・・・・・ブーケか?」

「ちがうっつ〜の!」

ユアンのボケに、ゼロスが天をあおぐ。

「ユアンさん。たった今、クラトスさんとアンナさんの結婚式が終わったところなんですよ〜♪」

コレットがそう説明する。

ユアンは、ようやく合点がいった様子でクラトスをにらんだ。

「・・・・・バカげたことを・・・・・時間のムダだ。私は帰るぞ!」

「あっ、ユアンさん?」

ユアンは、瞬間移動でさっさとすがたを消してしまった。

「・・・・・ブーケ・・・・・もってっちゃった・・・・・」

アンナが、困った顔でしいなを見た。

しいなは、おかしそうに笑って言った。

「・・・・・ま、いいんじゃないかい?ユアンが次に結婚できるといいけどねぇ」

「ご新郎ご新婦さま。そろそろお時間ですので、おこしいただけますでしょうか?」

「・・・・・あ、はい」

案内人によばれたアンナが、クラトスの手を取る。

「じゃあ、みんな、また明日ね♪明日、遊園地で、みんなで遊びましょうよ」

アンナがそう言うと、みんなは大喜びした。(特に、ロイドとコレット)

「じゃあな、母さん、父さん!」

大勢に見送られて、アンナとクラトスを乗せたドラゴンが羽を広げる。

ドラゴンが見えなくなるまで見送っていたロイドは、やけに感心した様子でつぶやいた。

「いやあ〜。オレ、クラトスには全然にてないってちょっと心配したけど、母さん似だったんだなあ」

「ロイド・・・・・」

おずおずと、コレットが近づいてきた。

コレットは、ロイドのすぐとなりに立つと、はにかみながらたずねる。

「ロイドは、アンナさんみたいに積極的な人・・・・・好き?」

「オレ?・・・・・どうかなあ〜。そりゃあ、キライじゃねぇけどよ」

「あのね。あのね、私も・・・・・」

コレットが手のひらをにぎりしめた時、二人の後ろから しいなが割りこんできた。

「ロイド!冷えるだろ?マフラー半分かしてやるよ♪」

「ロイドさん・・・・・手ぶくろを使ってください。私が、はめてあげます」

「え?プレセアまで?なんだよ、みんな、どうしたんだ?」

まさか、女性みんながアンナの積極さに影響を受けたとは夢にも思わないロイドは、突然のモテモテぶりに とまどうばかりだった。

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