ぺリット物語

7、ロイドの災難


「うわああぁあああああっっっ!!!!」

「・・・・・なんだ?」

ノイシュと共にいたクラトスが、まゆを寄せて小屋を見た。 つい先ほど、かまの火が落ちたというのでみんな小屋の中に入ったところで、 辺りをゆるがすような悲鳴が上がったのだ。しかも、一人や二人ではなく、大勢の大合唱だ。

「どうしたというのだ・・・・・?」

クラトスが急いで小屋の中へ入ってみると・・・・・

そこには、テーブルを囲んで ぼうぜんとかたまっているロイドたちがいた。

テーブルをのぞきこんだクラトスは、そこにならんだフィギュアを見て絶句した。

「・・・・・なんだ、これは・・・・・・・」

フィギュアは無事に完成していたが、どれもこれも、すべて、まっ赤なビキニと、黒いピンヒールをはいていたのだった!

「こんのアホ神子〜っ!なんてことしてくれたんだい!」

しいなが自分の人形をうばい取り、ゼロスの首をぎりぎりとしめあげる。

「・・・・・にくきうが・・・・・ありません」

プレセアは、黒いヒールをはいたノイシュを手に持って残念そうにつぶやいた。

ジーニアスは、念願通り(?)完成したビキニ姿のプレセアをしっかりとにぎりしめたまま・・・・・鼻血を流して、あおむけにたおれた!

ほかには、ノーム、コリン、クレイアイドル・・・・・なぜか、ユアンやボータも、まっ赤なビキニを着ていた。

「・・・・・!!!」

テーブルをながめていたクラトスが不意に息をのんだ。同時に、ロイドが大声をあげる。

「ああっ!これ、母さんだ!!」

たくさんのビキニ人形にまじって、茶色い髪をこしまでのばした笑顔の美しい女性がいた。それは、まぎれもなく、クラトスの妻で、ロイドの母親の、アンナ・アーヴィングだった。

ゼロスが、下品な笑い声をあげてロイドにつめよった。

「ロイドの母上か〜。見せろよ〜」

「なんだよ。オレが先だろ?」

「オレさまのおかげで水着姿が拝めるんだから、ちょっとぐらいかせって!!」

「いやだ!!!」

ロイドがアンナの人形を高く持ち上げると、手の中から、ひょいと人形がうばわれた。

ゆく先を見ると・・・・・

そこには、人形をしっかりと胸元にかくし、今にも天使術をしかけてきそうなぐらい殺気だったクラトスがいた・・・・・

「ちょ、ちょっと、タンマ!いや、オレさまは・・・・・ロイドくんが、母上が出来たら見せてくれるって言うからさぁ〜」

「ああっ!ずるいぞ、ゼロスッ!」

もみあうロイドとゼロスのとなりで、いつも以上に表情を失ったプレセアが、まったく感情のこもらない声で言った。

「・・・・・ジーニアスは、そんなに私の水着が見たかったんですか?・・・・・最低です」

「ちっ、ちがうよ、プレセア!!!」

ジーニアスは、今にも泣きそうな声をあげた。

あきれて言葉を失っていたリフィルが、嫌とは言えない強い口調で言った。

「この人形は、あなたたちに わたすわけにはいかなくてよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

ロイドとゼロス、ジーニアスは、モデル本人たちにフィギュアを没収(ぼっしゅう)され、リフィル先生からげんこつをもらい、料理当番のクラトスからは、夕食ぬきのおしおきを与えられてしまうことになったのだった。



「・・・・・母さん、ごめんよ。オレ・・・・・」

「ロイド・・・・・」

アンナの墓の前でうなだれるロイドの横に立ったコレットは、とても残念そうに笑って言った。

「せっかく、お母様のフィギュアが出来たのに・・・・・」

「ああ、それはいいんだ」

あれだけアンナのフィギュアにこだわっていたのに、ロイドはあっさりと言って、にやっと笑った。

「フィギュアは、もともと、クラトスにやりたかったんだ」

「・・・・・クラトスさんに?」

「ああ。・・・・・オレ、あいつが大事にしてたペンダントもらっちゃったからな。・・・・・あいつ、母さんが見れなくて、さみしいと思うからさ・・・・・」

「そっか・・・・・」

それにしても、ゼロスやジーニアスが かわいそうだ。そう思ったコレットは、ふとひらめいたアイデアに瞳をかがやかせて声をあげた。

「ロイド!私、いいこと思いついたよ!」

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