ぺリット物語

8、アンナのフィギュア


「へえ〜。これならいいんじゃないかい?」

「そうですね。コレットさん、すばらしいです」

しいなとプレセアは、上手に作られた服を着たフィギュアをながめて言った。

コレットは、フィギュアに手作りの服を着せたのだ。

「これなら、ジーニアスに人形をあげてもいいと思います」

「そうだねえ」

プレセアの言葉に、しいながうなづく。フィギュアを手わたされたジーニアスとゼロスは、顔をかがやかせて喜んだ。

「ありがとう、プレセア!」

「うひゃ〜っ!着せかえ人形かあ!こりゃあ、そそられるなあ〜!」

「言ったはしから ぬがすんじゃないよ!!!」

さっそく服をぬがそうとするゼロスの耳を、しいなが思いきり引っぱった。

「イタタタタ!ごめんなさいってば!!!」

「さて・・・・・・・と」

コレットは満足げにほほえむと、ロイドに向かって言った。

「あとは、アンナさんだけだね!」

「クラトスかー。あいつのことだから、もう、勝手に服を作って着せてるんじゃねえか?」

ロイドはそう言って笑ったが、コレットは、アンナの服も作ると言って聞かなかった。

「しょうがねぇなあ。・・・・・・・オレからたのんでみるよ」

「ありがと。ロイド♪」



ロイドは、夕食が終わって部屋にもどると、どこにも出かけないで一人で本を読んでいるクラトスに声をかけた。

「・・・・・・・なあ。ちょっと、いいか?」

「・・・・・・・なんだ?」

視線を本に落としたまま、声だけがこたえる。ロイドは、なぜか急に居心地が悪くなった気がしたが、コレットと交わした約束を思い出して、自分の背中をおした。

「あのさ・・・・・・・母さんのフィギュア・・・・・・・かしてくれないか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

クラトスは答えない。

ロイドは、かまわないで続けた。

「コレットが服を作ってくれるんだ。しいなとプレセアも、すんげーカワイイ服を着せてもらったんだぜ!母さんのも作ってもらおうよ。なっ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

ロイドは、無理に作った笑顔をくずさないように全身に力を入れたが、いつまでたっても反応がないのを見て、しゅんとうなだれた。

「・・・・・分かった。あんたの好きにしな」

よわよわしく言って部屋を出ようとした時、低い声が、ぼそりと聞こえた。

「・・・・・・・ロイド」

「なんだ?」

ふりかえると、どこか思いつめたような赤い瞳が、まっすぐロイドに向けられていた。

かすかに くちびるが動く。

ロイドの耳にクラトスの声は聞こえなかったが、彼の言葉は、はっきりと心にひびいた。



ありがとう・・・・・・・と。

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