5、フィギュアの極意
よく朝、まだ日がのぼりきらないうちから、ロイドたちはイセリアへ来ていた。
ロイドの育ての親で、フィギュアを作ることの出来るドワーフのダイクに会うためだ。
ロイドのフィギュア集めに最初はあきれがちだった仲間たちも、フィギュアの精巧 (せいこう)さと、何が出来るか分からないという面白さにつられて、いつの間にか、 全員がフィギュアを作るようになっていた。
しかし、さすがに、毎日毎日、朝っぱらから大勢におしかけられて迷惑しているのか、 ダイクは、朝食が終わるまでは家に入れてくれなくなっていた。
「ロイド。今日こそ、お母さまが出来るとイイね♪」
「ああ!オレ、今日は自信あるんだ!なんとなくだけどよ!」
ロイドとコレットは、明るくなったばかりで、 まだ冷たくぬれた空気をいっぱいにすって笑った。
「ロイドくぅ〜ん。自信よりも、ハートよ。は・あ・と♪」
ゼロスがキザっぽく前髪をかきあげて、ロイドのわきをこづいた。
「大切なのは、どれだけ熱い思いをこめたか・・・・・ってコトじゃないのぉ? もう、オレさまなんか、思いをこめすぎて、ど〜しよっていうぐらい、 バリッバリに気合い入ってるぜぇ〜♪」
「へぇ〜。・・・・・で、あんたは、何がほしいんだい?」
しいながゼロスにたずねると、プレセアが答えた。
「ゼロスくんは、ビキニのしいなさんがほしいそうです」
「なんだってえ!?」
しいなは、ゼロスの首を がっちりと両手でにぎりしめた!
「ぐぁああああ!!!!」
「・・・・・ねえ、プレセアは、何を作りたいの?」
ゼロスが死にそうになっている横で、ジーニアスが、おずおずとプレセアを見た。
「にくきゅうのある生き物です。ジーニアスは?」
「ぼっ、ボク!?ボクは・・・・・」
ジーニアスは困ってうつむいた。彼がほしいのはプレセアの人形なのだ。 だが、その気持ちを口に出せないジーニアスは、あわててとりつくろうように言った。
「ボボボボボクも、にくきゅうがいいなあ!しいなもコリンがほしいって言ってたから、 みんなにくきゅうだよねっ!」
そうこうしているうちに家のとびらが開くと、小さなヒゲもじゃの男が姿を見せた。 ダイクだ。ごはんを食べ終えたのだろう。
「お〜!またせたな。みんな、入りやがれ!」
小さな体に似合わない、大きく太い声がひびく。あちこちにちらばっていたみんなが、ばらばらと集まって小屋の中へ入った。
「よしっ!あとは、自然に火が消えるのをまつだけだ」
あれだけ待たせておいて、ダイクは、火をつけたかまに乱暴にペリットを投げ入れて ガツンとふたをしめると、じっと様子を見ているロイドたちに念をおした。
「絶対に、とちゅうでふたを開けるんじゃねぇぞ。オレは、今から 『がーでにんぐタイム』 だからよ。ジャマはすんな。後片づけは、ちゃんと自分たちでしろよ!」
それだけ言い残すと、ダイクは、バケツとジョウロを持って、 鼻歌を歌いながら外に出て行った。
「・・・・・いつ見ても、どう考えても、だれでも作れそうだよなぁ〜」
ロイドが面白くなさそうにつぶやくと、リフィルがぴしゃりと言った。
「あなたには無理よ。ペリット作成にはドワーフの秘術が使われているのだけれど、 それは、ペリットではなく、かまの中身と火に要因があるというわ」
「ヨ〜インって、なんだよ。・・・・・ま、いっか。とりあえず、時間をつぶそうぜ〜」
ロイドのかけ声が合図になったように、その場にいたメンバーが解散した。 もうみんな慣れたが、火が消えるまでに、かなり時間がかかるのだ。
天気もいいので、ほとんどのメンバーが外に出て行ったが、ただ一人、ゼロスだけが、 その場に残った。
なにやら、あやしげな笑いを口にうかべて・・・・・
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アンナと父様-長いお話『ペリット物語』 |