1、ローバーアイテム
「行くぜ、コレット!」
「うん! いっくよ〜♪」
コレットは明るく返事をすると、ロイドが戦っているモンスターに気づかれないように、 後ろから、ゆっくりと近づいていった。
緊張(きんちょう)で かわいたくちびるを、ぺろりとなめる。
コレットは、えいっ、という小さなかけ声と同時に、両方の手に持ったチャクラムの重みに まかせて、ぶん、と、うでをふった。
「ローバー・アイテム!」
ぐらり!・・・・・バランスをくずして、コレットの体が大きくかたむいた。
コレットは、何かをがまんするように目をつぶり、そのままの姿勢で、頭から モンスターにつっこんだ。
ガツン!
両手に持ったチャクラムがモンスターにヒットする。 そのショックではじき飛ばされたコレットは、顔からつっこむように、 勢いよく地面にすべりこんだ。
「ふみゃっ!」
しかし、たおれた彼女に手を差し出す者はいない。
すぐに顔を上げたコレットは、急いで自分の手を見ると、 そこに小さな石がにぎりしめてあるのを見つけて明るい声をあげた。
「もらっちゃいました〜!」
「よっしゃあ!」
いっぱいの笑顔で空に向かってうでをのばすコレットを見たロイドが、 今度は、自分の側に立っている銀色の髪の少年を見下ろした。
「ジーニアス!」
「オッケェ!」
ジーニアスはモンスターをにらんだまま返事をすると、 待ってましたといわんばかりに、手に持っていたケン玉で遊び始めた。 いや、ちがう。テンポよくケン玉をあやつっているが、口からもれるつぶやきは ・・・・・・・術を唱えているのだ!
「ファイアボール!」
それは、ケン玉で遊び始めてからすぐだった。
ジーニアスの頭上にいくつもの明るい光が生まれたかと思うと、 それはすぐにメラメラと燃える火のかたまりになって、モンスターめがけていっせいに飛んだ!
次々に飛ぶ火のかたまりは、ひとつ残らずモンスターに当たって一気に燃え広がった。
「ギャアアアアアッ!」
モンスターは、地面の底からひびくようなおそろしい声をあげて燃えつき、姿を消した。
「弱っちいなあ! そんなんじゃ、ダメだね〜」
ジーニアスが、やれやれと かたをすくめて言った。
そこへ、笑顔をいっぱいにうかべたコレットが かけよって来た。
「ジーニアス、すごいねぇ!」
「コレットもやるじゃない。レアペリット、ゲットだね!」
「ああ! コレットもジーニアスも、よくやったな!ついに、 レアペリット20コ集まったぜ!」
二人の間にロイドが割りこんでくると、それぞれのかたにガバッとうでを回して、 自分の胸に引き寄せた。
ジーニアスは、うっとうしげに顔をしかめると、じたばたと暴れて言った。
「いたたっ!もう、やめてよ、ロイド〜!」
「これで、ダイクさんの所へ行けるね♪」
コレットは、少し照れながら うれしそうに笑っている。
ロイドも、にかっと笑って言った。
「ああ!行こうぜ。イセリアへ!」
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アンナと父様-長いお話『ペリット物語』 |