15、新婚さん?いってらっしゃい
「ち、ちかいの・・・・・こっ、ここでか?」
クラトスは、信じられないという顔をしてゼロスを見た。
「ここでしなきゃ意味ないっしょ〜?」
ゼロスのにやけ顔が、さらにうれしそうにゆるむ。
それまでじっと成り行きを見守っていたしいなが言った。
「あのさ。結婚式っていうのは、みんなに見てもらうことが大切なんだろ?」
「そうね。私たちが証人になるのだから、誓いの証(ちかいのあかし)を示す必要があるわね」
リフィルもうなづいて言う。
クラトスは、弱々しくアンナを見て、ぼそりとたずねた。
「・・・・・ひたいで・・・・・いいか?」
「・・・・・もう」
アンナは仕方ないというようにかたをすくめると、こくりとうなづいた。
「・・・・・・・・・・・・・・」
クラトスがそっとこしをかがめて、アンナのひたいに口づける。
それを合図に、周りからいっせいに歓声があがった。
「おめでと〜っ!!!」
「ありがと♪」
アンナが手をふってこたえる。
リーガルがゆっくりと二人の前に歩み出て、ろうで封印されたふうとうを差し出した。
「これは、私からのお祝いだ。アンナどののリクエストにこたえて、ホテルアルタミラのデラックス・スイート宿泊券と、遊園地のフリー・パスだ。今晩の宿は予約しておいた。二人で、ゆっくりしてくれたまえ」
「わあ、ありがとう!」
「・・・・・おまえは、いつの間に・・・・・」
むじゃきに喜ぶ妻を見て、新郎があきれ返る。
次に、コレットが、小さな箱を差し出した。
「お二人とも、おめでとうございます♪これは、おそろいのペンダントです」
それにならうように、次々とプレゼントが手わたされる。
しいなからは、おそろいのゆかた。
リフィルからは、いせき(?)関係の物らしいが、二人の関係を魔力がとりもつという日記帳。
ジーニアスからは、ネコの着ぐるみペア・パジャマ。
ロイドからは、手作りのペア・ブレスレット。
プレセアは、うわき防止のお守り。
そして、ゼロスからは・・・・・純白フリフリの新妻エプロンだった。
「うわあ!みんな、本当にありがとう!」
アンナは、一人ひとりのほほにキスをしてまわる。
「じゃあ、さっそくアルタミラへ出発してちょうだいな」
ゼロスの合図で、聖堂のとびらが開いた。
そこに、ホテルアルタミラからむかえに来た従業員が ずらりとならんでいた。
歩き出した二人に、しいながあわてて声をかけた。
「アンナ、あれ、やってくれないか?ブーケ・トス!」
「ぶーけ・とす?」
アンナが首をかしげてクラトスを見る。クラトスも、分からないと首をふってしいなを見た。
「あんたの持ってるブーケを、後ろ向きに投げてほしいんだ。それを受け取った人が、次に結婚できるっていう言い伝えがあるんだよ」
「わあ!本当ですか?」
コレットが、両手をたたいてほほを赤らめる。
「なんだか、面白そうだな!」
ロイドも、やる気まんまんでこぶしをにぎった。
「わかったわ。じゃあ、い〜い?」
アンナは、くるりとみんなに背中を向ける。
そして、少しかがんで・・・・・天井にむかって、思いきり高くブーケを放りあげた。
「わあっ・・・・・!」
しいなとコレットとロイドが同時に走る。他のメンバーも、走りはしなかったが、ブーケの行く先を真剣なまなざしで追った。
ふわりと弧をえがいたブーケは、走る少年少女たちをはるかにこえて、誰もいない場所へ飛んだ。
そして、そのまま床に落ちそうになったその時、とつぜん、ひとつの影があらわれてブーケを受け取った。
その人物を見た全員が、いっせいに大声をあげた。
「・・・・・ユアン!!!」
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アンナと父様-長いお話『ペリット物語』 |