みんなの聖☆バレンタイン

7、思い出のチョコレート


港でジーニアスとチョコを食べ、ネコと存分に遊んだプレセアは、リーガルをさがして宿屋にもどって来た。街中をさがしても見つからなかったので、残る場所はここだけだ。

しかし、リーガルの部屋に行ってもだれもいないので、もしやと思ったプレセアは、台所へ行ってみた。

そこに、リーガルはいた。

アンナと一緒に。

「アンナさん・・・・・?」

「あら?プレセアちゃん。どうしたの?」

アンナがおどろいた顔をして言った。

「お二人で、何を?」

前もって何も聞いていないプレセアがたずねると、アンナは、照れ笑いしてリーガルを見た。

「別に・・・・・・・じゃ、私は、これで失礼するわね」

そう言って、アンナは かべを通りぬけてどこかへ行ってしまった。

残されたリーガルがプレセアを見る。

「どうした?」

「あの・・・・・これを」

プレセアは、こしに下げたポーチの中から、手のひらに乗るぐらいの小さな箱を取り出した。

「それは?」

「これは、私がアリシアに教えたチョコです。あの子は、いつか好きな人ができたら作ってあげるって言ってました。・・・・・もらったことは、ありますか?」

そう説明して、プレセアは、リーガルの手にチョコをのせた。

落ちついた緑色の包みをじっと見つめて、リーガルが、ぽつりとつぶやく。

「・・・・・ああ。しょっちゅう作ってくれていたよ。・・・・・・・・・・・なつかしいな・・・・・」

「そうですか」

プレセアの心に、じわりとあたたかい何かが生まれる。

プレセアの知っている小さいアリシアは、まだ一人でおかしを作ることができなかったので、いつも手助けしてやっていた。それが、いつの間にそんなに成長したのだろうか・・

自分のしてやったことが だれかの喜びになり、それが、またどこかへ伝わって幸せをよんでいる。そう考えると、プレセアはとてもうれしくなった。

そして、目の前でほほ笑むリーガルを見ていると、かつて、あれほどにくんだ相手だというのがうそのように静かな気持ちになれる。

プレセアは、この世界のどこかにいるにちがいない大切な妹へ、心の中でよびかけた。

(ふしぎだね・・・・・アリシア・・・・・・・・・・・・)

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