2、それぞれの想い
「なあなあ。コレットたちがチョコ作ってるけど、オレ、本命もらえるかな!」
ロイドが うかれて言う。
ジーニアスは、ふんと鼻で笑って言った。
「バッカじゃないの? 全員、『義理チョコ』に決まってるじゃない!」
「なにカリカリしてるんだよ〜。ガキんちょ!」
ゼロスがよゆうのある笑顔で言うと、 ジーニアスのかたにうでをまわして、耳元でそっとささやいた。
「プレセアちゃんがロイドねらいなのが、そんなにくやしいのか〜?」
「うるさいなあ!ぼ、ボボボク・・・・・あきらめたわけじゃないんだからねっ!」
「へえ〜。いい根性してるじゃん」
顔をまっ赤にして走り去ったジーニアスの背中をながめるゼロスに、リーガルが声をかけた。
「神子は、毎年うんざりするほど多くのチョコをもらうのであろう?」
ゼロスは、口のはしをにやっとつりあげる。
「あんただって、一コ何万ガルドっていう高級チョコが、わんさかもらえるんだろ?」
「そうだな・・・・・・・・・・」
リーガルは、ゼロスの言葉にどこかトゲがあるのを感じて口を閉じた。ゼロスは言わなかったが、リーガルには、彼の心の声が聞こえたような気がした。
本当にほしい相手からもらえなくちゃ、意味がないだろ?
(本当にほしい相手・・・・・か)
リーガルは、毎年、自分のために作られた特別なチョコを思いうかべた。もう、二度と口にすることはかなわない、あまい味を・・・・・
そんなリーガルの気持ちにまったく気づく様子もなく、ロイドは、元気いっぱいの笑顔をクラトスに向けた。
「なあ、クラトスは何個もらえるかな!たぶん、母さんからしか、もらえね〜んじゃねえか?」
クラトスは、こしに下げたナイフをとぎながら、ぼそりとこたえる。
「・・・・・バカげたことに、きょうみはない」
「ひゅ〜!妻帯者は、よゆうだねえ!」
ゼロスはそう言って茶化したが、その瞳は笑っていなかった。
アンナと父様-長いお話『みんなの聖☆バレンタイン』 |