みんなの聖☆バレンタイン

4、ただ一人のあなたへ


「ロイドさん。これ、本命です」

プレセアは、まっ先にロイドの元へ行くと、 堂々とチョコを手わたした。

「あ、ありがとう・・・・・なんか、照れるな///」

ロイドが喜んでチョコを受け取ると、プレセアは、まだやり残したことがあるというように首をかしげてロイドを見た。

「では、食べてください」

「今、ここでか?」

「はい」

「・・・・・なんか、もったいないな。こんなにキレイに包んであるのによ」

ロイドは、とまどいながら包みを開けて、中に入っているチョコをひとつ口に入れた。

「・・・・・うん。うまい!」

「よかった・・・・・」

ロイドの笑顔を見て、プレセアは はじめて笑った。とてもうれしそうに、そして、少しはずかしそうに。

その様子を遠まきに見ていたゼロスが、すねたように言った。

「プレセアちゃ〜ん!オレさまたちの分はぁ〜?」

「あ・・・・・そうでしたね」

プレセアはとたんにいつもの表情にもどると、順番にチョコを手わたしていった。つつみも中身もロイドの物と同じだったが、わたす時の態度が大きくちがう。

「そりゃないよ〜プレセアちゃ〜ん・・・・・」

しょんぼりするゼロスのとなりで、義理チョコでも もらえたことに喜びをかくせないジーニアスが、さも大事そうに胸にチョコをだいていた。 

「先をこされたか・・・・・くそっ!」

しいなは、少しはなれた木のかげからプレセアたちをながめていた。

「なんて言ってわたせばいいんだよ・・・・・」

彼女の手には、ロイドのためだけに作られた特製のチョコがにぎられていた。

「あたしも、プレセアみたいに、さらっとわたしちゃえばいいんだよ。さらっと・・・・・」

自分にそう言い聞かせてみるが、ふるえる足は ぼうのようにつったったまま、一歩も前に出ない。

「・・・・・くそっ!」

しいなは、にじんだなみだをうででぬぐった。くやしいのか、悲しいのか、どうして泣けてくるのか、自分にも分からなかった。


「はい。リーガル。いつも子供たちが世話になっているお礼です」

リフィルは、一人一人にチョコをあげる理由を説明しながら配っていた。

「ゼロス。私たちがつらい時には、いつもあなたの明るさに助けられるわ。ただ、女グセの良くないところは、もう少しなんとかならなくて?」

「とほほ〜。先生、きびし〜!」

「ジーニアス。あなたにも、いつも感謝しているわ」

「わあ、ぼくにも?ありがとう、ねえさん♪」

その場にいる男性全員にチョコをわたし終えたリフィルは、空をあおぐと、ひとつだけ残った箱を両手でにぎりしめた。

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