1、チョコレート大作戦♪
バレンタインデー
女の子から男の子へ、秘めた想いをチョコにこめて手わたすことが許された、年に一度の、大切な日・・・・・
「コレットちゃん、チョコは、もっと細かくくだいてね♪」
「はいっ!」
「アンナ〜、生クリームはこんなカンジでいいかい?」
「しいなちゃんのは、もうちょっと かたくなるまであわだてて♪」
「わかった」
広い台所で てきぱきと動きまわるアンナをながめていたプレセアが、ぽつりとつぶやいた。
「・・・・・アンナさん、ステキです」
今日はバレンタインデー。 女の子たちから、男の子みんなにチョコをあげよう。 そう言い出したのはアンナだった。
「だけどさぁ、男たちは幸せだねえ。 あたしたち全員からチョコをもらえるんだからサ」
しいなは、生クリームをあわだてる手を休めずに言って笑った。
「・・・・・義理チョコレート。体面をたもつために、好意を持たない相手にわたすチョコのこと。 まれに、本命を知られなくない時のカモフラージュとしても使われる・・・・・」
プレセアが、とろとろととけるチョコをじっと見つめながら言った。
「なんだって?」
しいながプレセアをにらむ。
プレセアは、しいなの目をまっすぐ見て首をかしげた。
「しいなさんは、本命は、だれにわたすつもりなんですか?」
「ほ、本命?そそそそんなの・・・・・い、いるわけないだろっ!そういうあんたはどうなのサ!」
「私は、ロイドさんです」
「あっ、私も、もちろんロイドだよ〜♪」
二人のやりとりを聞いていたコレットが横から口をはさむ。
プレセアは、いつもと同じ口調で、しかし、とても真剣な目でコレットを見た。
「では、ライバルですね」
「うん!がんばろ〜ねっ!」
(・・・・・あたしだって負けないよ)
しいなは、心の中でそう思った。
しかし、とてもではないが、はずかしくてライバル宣言の輪(?)に入れない しいなは、もくもくとチョコをとかしているリフィルに視線をうつした。
「リフィルは、だれに本命チョコをわたすんだい? ジーニアスかい?」
「・・・・・・・・・・・」
リフィルは、どこか上の空で、しいなの声が聞こえていないようだ。
「リフィルさん?・・・・・どうかしましたか?」
プレセアが言うと、リフィルは、はじかれたように顔を上げた。
「え?・・・・・あ、ごめんなさい、ちょっと、ぼーっとしていて・・・・・」
「あ〜っ、さては、ラブな彼のことを考えていたんじゃないの〜?」
アンナが笑って言ったが、リフィルは気分を害した様子で顔をしかめた。
「・・・・・私は、あなたたちにつき合っているだけです!」
そう言って、リフィルは、だれにも気づかれないように横目でアンナを見ると、小さなため息をついた。
アンナと父様-長いお話『みんなの聖☆バレンタイン』 |