7、
「くはぁ〜!死ぬかと思った!剣が使えたら瞬殺だったのによ!!」
「だから持って行けって誰かが言ってたよなあ、ロイド君?」
「持ってたって使えねーだろ!海の中だぞ!!」
「ロイドさん・・・・・話の内容が支離滅裂です」
宿にもどって目を覚ましたロイドは、少しの反省も見せるどころか、 悪態をついて周りを閉口させた。その態度には、さすがのリーガルも気分を 害した様子で、うでを組んで重々しく言った。
「ロイド。剣を持たないと決めたのはおまえの判断だ。その結果、おまえが 危ない目にあうのは仕方ない。自業自得なのだからな。誰も、おまえが剣を持たなかった ことを責めているのではないのだ。ただ、わたしは、おまえの判断で、かけがえのない者に まで命の危険がおよんだ・・・・・そのことを良しとは思わない。それについて、おまえは どう思っているのだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・悪かったよ」
そうは言ったが、ロイドはそっぽを向いたままだ。
「感じワル〜!会長さんよ〜。言うだけムダってもんじゃねーのか? どーも、こういうしめっぽいのは俺さまに似合わねぇなぁ〜。バーに行って飲むとするか」
部屋を出て行ったゼロスにうながされるように、一人、また一人と部屋を出て行く。 最後に残ったのは、コレットだった。
コレットは、にぎったこぶしを胸の上で重ねたまま、無言でロイドを見ていた。 その瞳にうかぶのは、怒りでも、非難でもない。彼女は、ただただ、ロイドの身を案じていた。
コレットの無邪気な様子にかたくなな気持ちがほぐれたのか、ロイドは、天井をにらんだまま口を開いた。
「・・・・・・・・オレさ・・・・・・・・・・・・ショックだったんだ・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
コレットは何も言わない。ロイドは、ようやく彼女の顔を見た。その表情は 晴れ晴れとして、しかし、どこか悲しげだ。
「オレ・・・・・海の中で、ろくに身動きできなかったんだ。あいつがナイフをくれたけど、 泳ぐのにせいいっぱいで、ちっとも攻撃できなかった・・・・・・・・なのに・・・・・・」
ロイドは、ふう、と息をはいて、笑った。
「なのに、あいつは・・・・・・自分のうでを魔物にくれてやって、動きを封じて・・・・・・オレに とどめをさせ・・・・・・って・・・・・・・・・・・・・・・・」
「すごい連携(れんけい)だね〜♪」
目を丸くして手をたたくコレットを見て、ロイドはかたの力を抜いた。
「オレさ、剣さえあれば誰にも負けない。そう思ってた。でも、あんな戦い方が 必要な時があるなんて・・・・・でさ、剣しかとりえのないあいつが、あんな戦い方をするなんて・・・・・・」
「新しい技を身につけたんだね。良かったね、ロイド♪」
「技っていうのか、あれ・・・・・。いや、そうじゃなくて、オレがショックだったのは・・・・・」
「クラトスさんに、かなわなかったこと?」
「・・・・・・・やっぱ、おまえもそう思うか?」
うんとのびをしたロイドは、ようやく何か吹っ切れた様子で頭をかいた。 いつもの調子がもどったのを見たコレットは、ほほを赤くして熱弁をふるう。
「うん。だって、クラトスさん、勝つために必要な技をたくさん知ってるよね。 攻撃だけじゃなくって、援護とか、防御とかね、とっても上手だと思うんだ。 自分がたてになっても、ロイドがとどめをさしたんだから、結局は攻撃だよね」
「・・・・・・・・そうかぁ〜?」
「うん、そうだよ!」
コレットは、思いきりよくうなづいた。
「きっとね、クラトスさんはね、いつも、心の中の剣で戦ってるんだよ」
「・・・・・・・・・・心の中の、剣・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
コレットの言葉をくり返したロイドは、ごろりとベットに転がった。
そして、声にならない声で言う。
かなわねえ、と。
アンナと父様-長いお話『明日にかける橋』 |