明日にかける橋

2、


次の日、ロイドは、アイフリードからゆずり受けた船について 学ぶため、ルインの港のさんばしに立っていた。

「オーライ、オーライ! よっしゃあ〜! 来い!」

アイフリードが操船する船が、ゆっくりとさんばしに近づいて来る。 ロイドは、船乗りとして基本中の基本、着岸のつな取りをしているのだ。

アイフリードが、船の前と後ろからロープを投げる。ロイドは、 前のロープを手に取って、さんばしにある 『つな止め』 に巻きつけた。

「あっ、コラ! テメェ!!」

アイフリードの怒声が上がる。何事かと顔を上げたロイドは、目の前にせまって 来る船体を見てぎょうてんした。

「うおっ!! なんだよ! なんでだ!?」

あわてるロイドをしりめに、ぐんぐんと近づいて来た船体が さんばしに 乗り上げようとする。とっさに手を伸ばしたロイドは、自分の全身で船を止めようとした。

「うぉりゃぁああ〜〜〜っ!!」

しかし、それよりも早く船から飛び降りたアイフリードが、船の後ろのロープを 持って走った。目にもとまらぬ早わざで、船の後ろにある 『つな止め』 にロープを巻く。 アイフリードが顔を上げた時、船はぴたりと動きを止めていた。

「ロイド! テメェ! 船にブレーキはねぇんだよ! 追い風の時は、スタン(船の後部)から止めろって言っただろうが!」

かんかんに怒ったアイフリードがロイドにつめ寄る。

「悪ぃ悪ぃ! 今、思い出したぜ〜!」

「キサマ、それで本当に7つの海に出る気があるのか!?」

「だから、悪いって言ってんだろ。次からは失敗しねーよ。船も傷ついて ないんだし、そんなに怒るなよ」

「・・・・・ったく、たのむぜ、おい・・・・・・・・・・・・・」


「でさあ、アイフリードのやつ、言うこと聞かなかったバツだ! とか言って、 オレ一人で船のそうじをやらせるんだぜ! ちくしょう!」

今日のロイドは、晩ごはんを食べながら文句をこぼしていた。

「あのさぁロイドくん。はっきり言いたかねーけど、船乗りには向いてないんじゃないの〜?」

と、ゼロスが茶化す。

「そんなことないよ〜」

と、コレットがあわてて助け舟を出した。

「船で旅するのは、ロイドの夢だもんね♪」

「そうさ! オレは、あきらめねーぞ!」

「さっすがロイド〜♪」

やんやと拍手かっさいを送ったコレットは、ふと、終始だまりこんではしを進める クラトスを見て首をかしげた。

「そういえば、クラトスさんの夢って、なんですかー?」

「別に・・・・・・そのようなものは、ないが?」

「じゃあ〜、今、考えてみてください♪」

コレットは何の気なしでそう言ったが、ロイドがまゆをつり上げて声を上げた。

「コレット! クラトスに聞くこたねーよ! どうせ、世界一の剣士とか、 そんなつまんねーこと言うに決まってるぜ!」

その言葉を聞いて、ロイドの気持ちがおさまるまで好きにさせていた 他のメンバーが声をあらげた。

「ロイド! あんた、自分の父親に何て口を聞くんだい!」

「そうだよ、しいなの言う通りだよ。クラトスさんにあやまりなよ!」

「・・・・・ロイドくん、冷たいです・・・・・・・・」

「だーーっ! うるせえ! オレ一人が悪者かよ!!!」

和やかに進むはずだった食卓に、イヤな空気がいっぱいにあふれる。 それを断ち切るように、突然、クラトスが立ち上がった。

「・・・・・・・失礼する・・・・・・・・」

クラトスは、まだ食事の残った皿をその場に置いてロイドに背を向ける。

「クラトスさん! まって下さい!」

「そうだよ、クラトスさん! 気にすることないよ!」

普段からクラトスびいきのコレットとジーニアスがあわてて止めようとしたが、 クラトスは、そのままどこかへ行ってしまった。


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