明日にかける橋

6、


「ロイド!クラトスさん!がんばって!・・・・・・ホーリーソング!!」

「やれやれ・・・・・コレットちゃんもスパルタだねえ〜」

「ったく・・・・船の上から援護(えんご)したって本当に効果あるのかい!? あたしが海にもぐって直接援護した方が、よっぽど手っ取り早いと思うんだけどねえ!」

「がまんなさい!二人がもどって来ないということは、水中で苦戦しているって事よ。 つまり、攻撃タイプのあなたが増えた所で足手まといになるだけよ!」

「・・・・・だからって、こんな所から援護しか出来ないなんてサ・・・・・・!」

「しいなさん、落ち着いてください。リフィルさんの言う事は正論です。 今は、ここから援護し続けるのが最も有効だと思います」

「ちっくちょう・・・!!」

ロイドとクラトスが海中に消えてから、すでに10分は過ぎたように思えた。 しかも、かなり深い所まで引きずりこまれたのか、二人の影どころか、魔物の 姿もまったく見えない。それでも、コレットたちは船の上から必死で援護を続けた。

術を使い続けてすっかりマナを消費してしまったコレットは、それ以上なすすべもなく、最後には胸の上で手を組んで祈った。

「クラトスさん・・・・ロイドを助けて・・・・・!!」

「・・・・・・あっ!あれ見て!!」

誰よりも目の利くジーニアスが声を上げる。指差した先で、まぶしい何かがキラリと光った。

「・・・・・・・ロイド!?クラトス!?」

普段は水が苦手で決して船べりに寄ろうとしないリフィルも、手すりから身を乗り出して水面を見る。

コバルトブルーのゆらめく色彩の奥深くで輝く光がどんどん近づいてくる。それは、ロイドをかかえたクラトスだった。彼が口にくわえたナイフが太陽の光を受けて輝いているのだ。

「・・・・・やったか!?」

リーガルが確信を得た強い声をあげる。

「よし!なわばしごを持って来い!!」

「オッケー!」

ジーニアスが運んだなわばしごを受け取ったアイフリードが、手際良くはしごを下ろす。

「・・・・・・・ロイドを・・・・・・たのむ!」

「まかせとけって!」

水面にうかんだクラトスの疲労した表情を見たアイフリードは瞬時に状況を察知したのか、 デッキに転がっていた長いフックを足でけると、それを手でキャッチしてくるりと回し、フックをのばしてロイドの服のえり足に引っかけた。

「ロイド!しっかりして!!」

「ロイドさん!」

「ロイド!大丈夫かい!?」

ずるずると引き上げられるロイドに、コレット、プレセア、しいなが手をのばす。 女性陣に助けられて無事にデッキに上げられたロイドは、青い顔をしてぐったりしたまま動かない。

「だらしねぇなぁ〜!すっかり気を失ってやがるぜ!」

がははと高らかに笑うと、アイフリードは自ら手をのばしてクラトスのえり足を引いた。

「うわっ!く、クラトスさん!?」

船上に上がったクラトスを見たジーニアスが仰天(ぎょうてん)して言葉を失う。 クラトスの右うでの服はズタズタにさけ、あらわになった皮ふも肉が裂けて血まみれだ。

「だっ、大丈夫かよ、おい!?」

あわてふためくゼロスを見たアイフリードが、あきれた様子で笑った。

「なーに。こんなのかすり傷だって。血が海水で流れるから、余計に深手を負ったように見えるだけだ」

「・・・・・・・・フ・・・・・・・・・・・その通りだ・・・・・・・・・」

クラトスも、あらい息をつきながら口のはしを上げる。

「ロイドは・・・・・・・・無事か?」

「今、治癒(ちゆ)は完了しました。大量に飲んだ水もはかせたので、心配はいりません」

プレセアの笑顔を見て、クラトスは ゆっくりと空をあおぎ、長い息をはいて、言った。

「・・・・・・・・・ありがとう」





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