明日にかける橋

4、


翌日は、朝早くから港のさんばしがにぎわっていた。
ロイドの基本訓練が一通り終わったので、試しに船を動かそうと アイフリードが出港の許可をくれたのだ。もちろん、他のメンバーも乗りたいと志願し、 全員が小さな船に乗って輝く海へと出発した。

「ひゃっほー!」「すごいねー!」

「あんまりハシャぐんじゃないよ!海に落ちたらどうすんのサ!」

しいながあきれて言ったが、船に乗る前から一番はしゃいでいたロイドと ジーニアスは、ますますテンションを上げて笑った。

「大丈夫だって。なあ、ジーニアス!」

「そうだよ。ボクたち、もう何度も船に乗ってるんだよ」

その様子をはなれた場所からじっと見ていたクラトスが、不意に低い声を上げた。

「・・・・・・・ロイド、剣はどうした。海洋にも魔物はいるのだぞ。おまえは丸腰で航海する気か?」

コレットたちがロイドを見ると、確かに、ロイドはいつも肌身はなさず持っている剣を 1本も身につけていなかった。

「ロイド君、どうしたのよ〜。剣といえば、キミの唯一のとりえでしょうが〜」

「ゆいいつって言うな!俺は剣がなくたって大抵の魔物には勝てるさ。LV.213だぜ!」

ロイドは胸を張ってそう言ったが、誰もがあきれた顔をしていた。

クラトスは、処女航海の輝かしさとはにつかわない渋い顔をしてつぶやいた。

「慢心はスキを生む。何事も起こらなければ良いが・・・・・・・・・」

「痛い思いをさせたくないというあなたの気持ちは分かるけど、 この場合、何か起こった方が良いのではなくて? 良薬口に苦しという言葉もあるし」

この事態は回避できないと悟ったのか、リフィルがやんわりと言った。

「そうですね。慢心かつ怠慢(たいまん)。仲間の注意どころか、唯一のとりえすら軽く見ている 今のロイド君の精神状態は、とても健全とは思えません」

「しかし・・・・・・・」

プレセアの言葉も納得できないのか、クラトスはますます顔をゆがめる。

重い空気が流れたのを見たリーガルが、ゆっくりとクラトスに歩み寄って言った。

「クラトス。何事も先走って手を貸すばかりが最善ではないと、 貴方はすでに知っているのだろう。貴殿の心中は察するが、ロイドのためだ。 ここは、息子のためと耐えるのだ」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

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