アンナの誕生日

5、おともだち


いつもと同じ朝。 いつもと同じ時間。

変化は、少しずつ おとずれる・・・・


「おはよ〜、ぽぽたん♪今日も元気?」

「・・・・・へえ。お昼から雨がふるのね。わかったわ」

今日も朝から庭先に座りこんでタンポポと語らうアンナを見かけたクラトスが、自分のわきにいるノイシュに声をかけた。

「・・・・・・・・・・・あれは、毎日あきもせずに、一体、何を話しているのだ?」

「ああ。クラトスは、花と話ができないんだっけ」

「・・・・あれが特別なのだろう」

そう言うクラトスは、どこか面白くなさそうだ。

「クラトスの悪口言ってるよ〜♪」

ノイシュが楽しそうに言うと、クラトスは、本気で気分を害した様子でだまりこんでしまった。

「なんだよぅ〜。そんなにヤキモチやくんなら、ほり出してあげなきゃよかったのにさ〜」

「・・・・あれが言い出したら、素手で土をほり返すぐらい簡単にやってのけるだろう。それを懸念(けねん)したのだ!」

「はいはい。そういうことにしといてあげるよ」

眠たそうに返事して、ノイシュは、今度は、アンナのところへ走って行った。

「アンナ〜。ポポタン、おっはよ〜♪」

「おはよう、ノイシュ♪」

タンポポを持ち帰ってから ますます明るくなったアンナは、前にも増して、よく笑うようになった。それは、クラトスにしてみればうれしい限りだったが、あれ以来どうも、いや、はっきりと、彼女がクラトスに声をかけてくれる回数が減っていた。

(・・・・まあ、かまわん・・・・・か・・・)

クラトスは、自分の胸にうずまく複雑な気持ちを自覚して苦笑した。

アンナは、花にポポタンという名前をつけて、まるで自分の親友のように接していた。彼女が話し出来る相手といえば、これまでずっと、選ぶ余地もなく、クラトスとノイシュしかいなかったのだから、新しい友達が出来て、うれしくて仕方ないのだろう。

(まちがいなく、私よりは、良い話し相手になるだろうしな・・・)

(それにしても、アンナも、あの花を気に入るとは・・・・・何か、因縁めいたものがあるのかもしれんな)

その原因が自分にあるとはつゆほども感じていないクラトスは、わきあいあいとにぎわう庭先をながめて目を細めた。

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