テイルズ・オブ・日本一?


「ぐぬぬぬぬ……貴様ら、お遊び感覚で我輩と戦っておるのかぁ〜!? こうなったら……」
「いや、どう考えてもお前の方だろ」
 誰にもキャッチしてもらえなかったのが不満だったのか、ジャンケンで負けたリーガルとユアンが地中から引っ張り出したキングダークが文句を言うと、さらっとゼロスがツッコミを入れた。
「とにかく! この一撃で沈めてくれるわぁぁ!! 見よ、我輩のこの身より溢れ出る漢の魅力を!!」
 声を区切る度に次々とマッチョポーズを決めて、キングダークは空高く飛び上がった。今の内に遠くへ避難しようかと思ったが、背後で魔術が発動するのを感じた。
「輝く御名の下、地を這う穢れし魂に裁きの光を雨と降らせん。安息に眠れ、罪深き者よ」
 地を這うっていうか、飛び跳ねているよ。
「メェェェンズ・パッショ…………」
「俺さまの本気、見せてやるよ。ディバイン・ジャッジメント!!」
「ふんぎょあああああああああああああああああああああああああ!!!」
 キングダークは地上に到達するより早く、ゼロスの秘奥義ディバイン・ジャッジメントの餌食となり、またも無様に落下した。
「諸君。俺さまに、惚れるなよ?……な〜んて、ね!」
「珍しいね、ゼロスが女の人がいないのに本気になるなんて」
 華麗なポーズを決めたゼロスに、すぐさまジーニアスが身も蓋もない事を言った。すると、ゼロスはいつものようにムキになって反論せず、がっくりと項垂れた。
「いや、バイアスに受け止めろって言われた時に、ほんの一瞬でもその光景を思い浮かべてしまった俺さまがマジで情けなくってさぁ……」
「やつ当たりかよ!」
 心底嫌そうな声でゼロスはそう言ったが、キングダークからすれば迷惑もいいところだ。なんだか、だんだんあのオッサンがかわいそうになってきた。
「ぐ……ぬぬぅ〜。おのれぇぇぇい……まさか、たった一撃で……この、魔帝ロイヤルキングダーク3世が……なんということだ!」
 まだ立ち上がって、キングダークはまだまだこれからだと言わんばかりの様子だった。ロイド達は溜息をついてから応戦しようとした……が、意外な人物から意外な言葉が出てきた。
「消えなさい。同じ元魔王として、あなたのような姑息で往生際の悪い輩は、見ていて腹立たしい。せめて、これほどの勇者に敗れたことを誇りに思いなさい」
 バイアスは真剣な、凛とした表情と声で、キングダークにそう言い放った。いつもの不必要なまでにハイテンションで明るくてお調子者の彼とは、まるで別人だ。
「同じ……? ま、まさか、貴様は! 大魔王……」
「その名を言うのはおよしなさい!! 激・ビューティー弾!!」
 キングダークが何かを言おうとした途端、バイアスは声を荒げて4人に分身してキングダークをボコボコにし、4人で囲み魔術か何かでキングダークを攻撃し、最後は巨大な実体化したエネルギー弾を叩き落した。
「ぶるあああああああああああああああ!!!」
 キングダークの絶叫が、辺りに木霊した。
「つ……強ぇ……」
 初めて戦った時とは比べものにならないバイアスの実力に、ロイドは驚きのあまり声に出して言っていた。みんなもそれは同様らしく、特にユアンの驚きは相当なものだった。
「時空の渡し人よ、ビューティー男爵バイアスの名において命じます! このオッサンを宇宙の彼方に吹っ飛ばしてしまいなさい!」
「ビェェェェェェン!! ママーン!!」
 最後の情けないにもほどがあるキングダークの叫びに、全員不覚にも吹き出してしまった。最後の最後まで、面白おかしいオッサンだった。
「でっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ! いやー、しっかし、最後まで情けないオッサンだったなー。あーだめ、腹痛ぇ」
 いくらなんでも、ゼロスは笑いすぎだと思うが。
「さて、と。急ではありますが、ちょっと疲れちゃったので、私もそろそろ帰ることにします」
 全員の笑いが収まると、バイアスは本当に急にそう言った。
「ええ! 随分急だな」
「私は一向に構わんがな」
 相変わらずユアンはバイアスを嫌っているようだが、案外とそう見えないんだよな……ケンカするほど仲が良いってやつかな?
 バイアスは先程の真剣な表情はどこへやら、いつもどおりのゼロスみたいな表情と調子に戻っている。
「皆さん、私との別れが惜しい事は重々承知しております。ですが、お忘れなく。ビューティー男爵はいつも、貴方の心の中に……は〜っはっはっはっはっはっはっはっはっ!!」
 言った後、やたらと豪華な光に包まれて、バイアスは行ってしまった。
「相変わらずだね〜」
「ま、今回は割と大人しめだったけどな」
 ジーニアスは昨日の事件のように大事には至らなかった安堵感から、笑みが浮かんでいた。
『ロイド達はビューティー男爵バイアスの分身(半永久)を手に入れた!』
「な、なんだよこのアナウンス!?」
 安心する間など与えないと言わんばかりのタイミングで、どこからか、バイアスの声でアナウンスが響いてきた。そして、リーガルがふとユアンの後ろを見ると、目を点にした。
「……本当にいるぞ」
「なっ!? いつの間に!?」
 ユアンは思わず飛び退いてダブルセイバーを構えたが……バイアスの分身は動かなかった。そういえば、前に貰ったのもちょっとの間は静かだったような。
『追伸。その分身は起動までにしばらくかかります。魔力で作った物だからって、壊さないで……』
「天翔雷斬撃!!」
 アナウンスが終わらない内に、ユアンはバイアスの分身を真っ二つにした。分身はそのまま倒れず、細かい粉のようになってバラバラに散ってしまった。
『あーっ!! これから貴方が死ぬまで半永久的に、おはようからお休みまで、あなたを真後ろから見守りつつ見つめるビューティー分身がぁぁぁぁ!!!』
 やっぱりバイアスか。というか、言ってることが結構怖いぞ。
「二度といらんと言ったはずだろう! さっさと帰れ!!」
『あー傷ついた! 本当に傷ついた! 今日の午後にでも、マーテルさんから聞いたあなたの赤っ恥ストーリー、封書でゼロスさんに送りつけますからね!!』
「なっ!?」
「って、俺さまかよ!!」
 毎度の事ながら、来る時も帰る時も、どうしてこんなに賑やかで騒がしいんだろう。ここ最近現れる悪魔達は。

 

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