テイルズ・オブ・日本一 第2話 宇宙最強の魔王、堂々見参!!

おまけ。


 ゼタがブレイズたちを全員魔界に送り返すと、ゼロスは早速彼の面倒を見ることになった。移動は、一応浮かびながらできるらしい。しかも、意外と速い。
 ここに来たようにワープか何かで一気に移動できないかと尋ねたが、「初めて来た世界では、いきなりやるのは危険だな。どこに吹っ飛んでもいいのなら、我は別に構わんぞ?」とのことだった。
「……意外と使えねぇな」
「なんか言ったか!?」
「これから、妹のいる修道院に行くから、急がなきゃ〜って、言ったけど?」
「……ふん。まぁ、よい」
 これをセレスが気に入るかは正直微妙だが、案外いけるかもしれない。約束の時間にだいぶ遅れてしまった、詫び程度にはなるだろう。
 そんなことを考えているうちに、南の修道院についた。レアバードやエレカーが使えれば、もっと楽な道程なのだが……。
「あ〜。つっかれた〜」
「ほれ、さっさと行くぞ」
「おおっと、ちょい待ち。あんたのいた……魔界ではどうってこと無かったかもしんないけど、ここでは喋って浮いて移動する顔つきの本なんてないんだから、せめて、中に入るまで普通の本を装ってくれよ〜」
「ちっ。面倒な……」
 色々小言を言われたが、ゼタも一応納得してくれた。ゼタを小脇に抱えて、セレスの部屋へとやや早足に進んだ。
「いよっ! セレス、遅れてわりぃな〜。ユグドラシルの所で、ちょっとした事件に巻き込まれちまってよ〜」
「そうですか。別に、私はお兄様が来るのが遅いからといって、心配なんか、ちっともしていませんでしたわ」
「そうかそうか。ありがとうな、かわいい妹よ」
 そう言って、ゼロスは帽子越しにセレスの頭を撫でた。
「と、ところでお兄様。その、脇に抱えていらっしゃる本は?」
 セレスはやや慌ててゼロスの手を払うと、ゼロスが脇に抱えたゼタに気づいた。
「お、これか? ゼタさんよ、もういいぜ〜」
 ゼロスはゼタを放した。ゼタは床に落ちずに直前でピタッと止まり、宙に浮いた。セレスはその光景に、目を点にしていた。
「あー、息苦しかった。おい、貴様! 我の鼻と口を押さえながら運ぶとは、一体どういう了見だ!? おかげで窒息寸前だったぞ!」
「でっひゃっひゃっひゃっ。わりぃわりぃ、わざとじゃないって。いわゆる、不可抗力ってやつ?」
「おのれぇ、ゼロス! 貴様ぁ!」
「きゃあああああああああああああああああああ!!!」
 ゼタが目を妖しく光らせた瞬間、セレスが黄色い歓声を上げた。これには、流石のゼタもびっくりした。
「な、なんだ!?」
「凄いですわ! この本、浮いてるし、喋ってる! お兄様、これをどこで!?」
「これとはなんだ! 我は宇宙最強の……むお!?」
 興奮したセレスに、突然ゼタは抱き上げられた。セレスは頬を紅潮させて、ゼロスに迫った。
「御伽噺でしか出て来ないような物だと思っていましたけど、実在するなんて! 凄いですわ!」
「お、おい、ゼロス! これは一体どういうことだ!?」
 ゼタはセレスに抱えられたまま、状況の説明を求めた。ゼロスも予想を遥かに上回る好評に、満面の笑みを浮かべていた。
「んじゃ、説明しますか。実は、セレスは幼い頃からこの修道院に軟禁されている、カワイソ〜な子なのよ」
「それで、何で我の存在をこんなに喜ぶのだ!?」
「セレスは一歩も外に出られなかったから、世話役の修道女や執事のトクナガに聞かせて貰える外の話とか、特に御伽噺やファンタジーな物語とかが唯一の楽しみだったらしいんだよ。一時は、それらと現実がごっちゃに……」
「お兄様!」
「だっはっはっはっ! 冗談だってぇ〜。とにかく、あんたみたいな突拍子も無い、物語の中にしかいないような存在に、密かにずっと憧れてたってわけだな」
「それでか。ええい、小娘! いいかげん放せ! 我は、宇宙最強の魔王ゼタだぞ!?」
「魔王!? 本なのに!?」
 セレスはゼタを今度は両手で掴み、ゼタの顔を自分の顔と向き合わせた。ゼタは嬉々とした目を睨み返しながら、高圧的に答えた。
「元々この姿ではない! ちょっとした事情でこの本に憑依(コンファイン)しているだけだ!」
「凄い! お話を聞かせてくれませんこと? どうやって魔王になったのか、どうして本になったのか、あなたの住む世界のこととか!」
「ゼ、ゼロス、助けぬか! 貴様は我の弟子だろうが!」
 セレスの好奇心は、ゼタでさえも太刀打ちできなかった。実兄であるゼロスにゼタは助けを求めたが、当のゼロスは何かを企てた笑みを浮かべていた。
「セレスぅ。その本、2,3週間貸してやろうか?」
「なにぃぃ!?」
「本当ですの? お兄様!」
「おうよ。その代わり、しっかり面倒見るんだぜ?……っと、やべ、もうこんな時間か。わりぃな、セレス。今度はちゃんと、時間どおりに来るから」
「はい。私のほうこそ、素敵なプレゼント、ありがとうございます♪」
「お、おいコラ、ゼロス! 勝手に話を進めるな!」
 ゼタの叫びを無視して、ゼロスはそそくさと階段へと向かって行った。
「じゃ、俺さまはこれで。ちなみに、その本の名前はゼタだ。またな〜」
「ごきげんよう、お兄様ぁ〜」
 ゼロスが出て行くと、ゼタは肩?をわなわなと震わせた。
「お、おぉのれゼロスゥゥゥゥ!! 覚えておれぇぇ!!」
 その後ゼタは、約半年間、殆どをセレスの部屋で過ごしたという……。
「なにぃ!? 2,3週間ではなかったのか! おのれ、ゼロスぅ!」
 それじゃあ、せめて次回予告でもやりますか?
「当然だ。次回、宇宙最強王者ゼタ!『地球完全制圧』を、せいぜい楽しみしておるがよい! ふはははは!!」
 嘘を言わない。
「ちっ、よかろう。次回は書くとしたら……『堕ちた勇者〜The Prince Of Darkness〜』(マジメ路線)か、『アホが来た』(ギャグ路線)の予定だそうだ。……って、おいおい、いくらなんでも扱いが違いすぎやしないか?」
 じゃあ、『自称ロイヤルな森羅万象の王、魔帝現る』と、どっちがいいですか?
「やっぱ、前者だな。だが、声ネタが基本での選出なら、あのアホはともかくとして、奴はおかしくないか? サロメやプラムにバビロンの爺さんもいるし、特にミッキーが適任だろう」
 立場と過去での特別選出です。サロメとも悩みました、バイアスと『愛を重んじる元魔王コンビ』とか。他の魔王たちは出しにくいけど、彼なら大丈夫ですし。 アビスだったら、10周年記念作品だから「闘技場に乱入」というだけでもいいんですけどね。
「ふ〜ん……ぬお!」
「さあ、早速、お話を聞かせてくださいませ♪」
 本当に楽しみそうなセレスの瞳を、ゼタはまじまじと見た。すると、先程とは打って変わって、静かな口調で話し始めた。
「……ふふん、よかろう。我が宇宙最強の武勇伝、とくとその脳裏に焼き付けるが良い」
 なんだかんだで、結構楽しそうなゼタなのでした。元々、話したがりの聞かせたがりですからね。



まだまだ終わらんぞ!byゼタ

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