※こちらの小説は、スペシャルゲスト、T・Mさんの作品です。 それでは、どうぞごゆっくりとお楽しみください☆
テイルズ・オブ・日本一 第3話
堕ちた勇者〜The prince of Darkness〜
テセアラのボアーゼ宰相が起こした叛乱未遂事件(ドラマCD3巻のストーリー)から10日後。ロイド達は、久々に全員揃って大樹ユグドラシルの所に集まっていた。今回は本人達の希望で、セレスとゼタ本も来ている。
「いやぁ〜。あの時は本当に大変だったぜ」
ロイドがそう溜息混じりに言うと、ゼロスが元気良くそれに頷いた。
「そうそう。なにより、“神子様の迫真の演技が光る!”ってやつ? みたいな? でっひゃっひゃっひゃっ!」
……何故か、自慢げに言われると無性に腹立たしかった。それはどうやら他のみんなも同じだったらしく、リーガルは笑みを浮かべながらゼロスに詰め寄り、
「それでは、謹んで我がレザレノカンパニーから、主演男優賞の称号を……」
「それはマヂ勘弁」
「冗談だ」
などと言った。それだけ、みんなに心配を掛けたのだから……。
「ゼロス! 今日こそみんなの前できっちり謝るんだよ」
「え〜?」
しいなが調度、ロイドが思っていたことをゼロスに言ってくれた。
ゼロスは面倒くさそうな声を漏らしたが、しいなとセレスに睨まれ、怯えるように畏縮し、頷いた。この2人は特に心配して悲しんでいたようだから当然だろう。
「わ、わぁったよ。いや、なんつーか……あの時は、迷惑っつーか、無駄に心配懸けさせちまってホント、悪かったな」
ゼロスは頭をぽりぽりと掻きながら言った。ロイドはゼロスらしいと思い、それでいいとした。多分、みんなもそうだろう。
「ふん。ようやく五月蝿いヤツが静かになったと思ったのだが」
ユアンが皮肉そうに言うと、セレスが睨みつけた。ユアンはそれを平然と見返し、セレスが詰め寄ってもまるで動じない。
「ユアンさん。お兄様のことを、そんなに邪険にせずとも宜しいではありませんか。どうして、そんなにお兄様のことが嫌いなのです?」
そう言われると、ユアンは指を折りながらその理由となることを列挙していった。
「アホ、色魔、軟派、アホ、軽薄、苦手、アホ、間抜け、甲斐性なし、アホ……」
「おいおい、ユアンさんよぉ。な〜んで3回に1回、態々『アホ』を連呼するのかなぁ?」
「黙れ、エロ神子」
「誰がエロ神子だ!」
「ゼロスだろ」
ロイドが即座にそう言うと、ゼロスは大袈裟に嘆いてみせた。
「ロイドく〜ん、そりゃないでしょーよ!」
「いえ、ロイドにしては的を射ていてよ」
「ゼロスくん、最低です」
「俺さましょんぼり……」
リフィル先生とプレセアの容赦ない追撃に、ゼロスは本気で落ち込んでいるようだったが、いつものことなので無視した。
「そういえば、コレット。最近は壁に激突したりしないのですか?」
マーテルにそう聞かれて、コレットは頬を赤くしながら、正直に答えた。
「えぇと……それが……ちょっと前に、家の壁を、また……」
コレットが家の壁を壊したのって、これで何回目だったっけ?
そんなことは考えていると、この事を良く知らないゼタが、本の角で突っついてきた。
「しかし、そんなに頻繁に壁をぶち抜いている割には、怪我が見当たらんぞ。その、クルシスの輝石とやらの力か?」
「いや。コレットは輝石を装備する前からずっとやってたから、きっと慣れてるんだよ」
「……それはドジと言える領域か?」
言われてみると、確かにコレットのドジはちょっと特別だ。
ゼタの言葉を受けて、全員がコレットのドジを思い出した。
「確かに、コレットのドジは凄いよねぇ。あたしも、散々な目に遭ったし……」
しいなは、オサ山道で初めて顔を合わせた時、コレットを殺そうとして、コレットが開けた穴に落とされたっけ。
「コレットさんの病気の治療法を探す時も、コレットさんのドジのおかげで見つかりましたよね」
山積みにされていた本の山にコレットがこけて突っ込んだら、探していた本が調度先生の前に落ちてきたっけ。あれは凄かった。
「コレットちゃんのドジといえば、やっぱりフウジ山岳のでしょうよ〜。俺さま、あれには惚れ直しちゃったぜ〜」
「ああ、あったな、そんなことも」
フウジ山岳のユアンが仕掛けた罠を、コレットが転んで装置を壊してくれたお陰で破ることが出来た。
「ウィルガイアでも、コレットのドジのおかげで端末が再起動して、脱出路を見つけられたわね」
動かなかった機械が動いたんだっけ? あそこはなんだか難しいことが多くて、あんまり覚えていない。
……そうだ! コレットのドジと言えば!
「トリエットでは、コレットが再生の旅の時に開けた家の壁の穴、今では観光名所になってるぜ!」
あれを初めて見た時は、流石に驚いた。ジーニアスは、ディザイアンのしわざだと勘違いしていたっけ……。
「……天然、なのか?」
「ああ。間違いない」
ゼタの問いに、リーガルは静かに頷いた。
「1年足らずの旅の間で、よくそんなに転びましたわね」
「本当ね」
セレスとマーテルも、コレットのドジの多さに驚いていた。
「もぉ〜。私のドジの話ばっかりしないでよ〜!」
珍しく、コレットが怒ってしまった。みんなは笑いながら謝罪し、コレットを宥めた。今日はいつになく、穏やかな風が吹いていた。
アンナと父様-お話スペシャル!『テイルズ・オブ・日本一 第3話 堕ちた勇者〜The prince of Darkness〜』 |