テイルズ・オブ・日本一

※こちらの小説は、スペシャルゲスト、T・Mさんの作品です。 それでは、どうぞごゆっくりとお楽しみください☆



テイルズ・オブ・日本一

 ヴェントヘイムでの決戦から2週間後。クラトスの傷も癒え、ユアンもレネゲードの退避を終了させたので、ロイド達は二人を交えてアルタミラに遊びに来ていた。
「折角だしさぁ、水着に着替えて泳ごうぜぇ〜?」
「……私は、水着など持っていない」
「私もだ。大体、何でこんな所に……ブツブツ」
 ゼロスの提案に、最年長者の二人は渋い顔をしていた。だが、海に来たのに泳がないのは勿体ない。プレセアも、あの時はヘンテコ(?)なお守りを作っていたせいで、全然泳げていないし。
「リーガル、水着は売ってないのか?」
「ああ。ホテルの売店に、幾つか揃えてあるはずだ。レンタルの物もある」
「いいじゃん。二人は借りればさ」
 ロイドの提案に、クラトスは渋々頷いた。
「そこまで言うのなら……」
「私は絶対に泳がんぞ」
 ユアンは頑なに拒否し、ロイド達に背を向けた。それを見たゼロスは不機嫌そうな顔をして、ユアンに抗議した。
「ユアンさんよぉ、こういう時に、そういうこと言うのは無しでしょうよ〜」
「もしかして、カナヅチだったりして〜」
 ジーニアスのその一言を皮切りに、ゼロスとロイドと3人でユアンを囃し立てた。ユアンは溜息をついて、出口に向かおうとしたが、クラトスが三人を諌めた。
「いい加減にしろ。ユアンが泳ぎたくないのには、ちゃんと理由がある。そしてそれは、我々がどうこう言えるものではない」
「そうかい。それならしょうがないんじゃないかい?」
「あなた達、言い過ぎよ」
 間髪を入れずしいなとリフィルが同意し、三人はリフィルからお仕置きを一発ずつ受けた。
「……コレットさん、どうしました?」
 ユアンも付き添いということで同意して、滞在を了承したところ、何時の間にかコレットが一人で砂浜に行っていた。
 プレセアが声を掛けたのは、調度戻って来たところだった。
「うん。なんだか、この子が私を呼んでたみたいなの〜」
「この子?」
 ロイドは、コレットが抱えている奇妙な瓶を見た。……なんだ、これは。
「手足が生えてるぞ、これ」
「テセアラじゃ、こういうおもちゃが流行ってるの?」
「いや、俺さまも初めて見る……」
 そうこう言っているうちに、ビンは手振りだけだが、恭しくお辞儀した。
「な……!」
「ちわー。神子御一行様ですね? ボトルメールでーす」
「び、ビンが喋った!?」
「素晴らしい!」
「うわ! 久々に出た!」
 喋るビンに反応して、リフィルが久々に遺跡モードになった。それで身の危険を感じたのか、慌てたビン――ボトルメールは、コレットを急かした。
「は、早くボトルを開けてください!」
「あ、はい。分かりました〜」
 すると、クラトスとユアンが急に血相を変え、コレットを制止しようとした。
「ま、待て……!」
「え?」
 コレットがボトルを開けると……
 ロイド達は、見たことの無い城の大広間にいた。
「ど、どうなってるんだ!?」
 混乱する中、一人嬉々とした表情で辺りを見回すリフィルを無視して、見当が付いたらしいクラトスが話し始めた。
「何らかの魔法で、我々をここに転移させたのだ。しかし、ほんの一瞬で、こんなことが出来るとは……」
「古代大戦でも、こんな技術は無かった。一体、これは……」
 ユアンが驚嘆の声を漏らした、その時、奥から高笑いが聞こえてきた。
「は〜はっはっはっはっはっはっ! ようこそ、今宵を彩る麗しき空間へ!!」
 見ると、高い所に置かれた玉座の奥から、一人の男が姿を現した。肌着を身につけず薄着で、露出度の高い格好をし、紫の綺麗なストレートの髪は腰まで伸び、背中には悪魔のような羽の生えた、端正な顔つきの男だ。……ゼロスのような印象を受ける。
「お前は誰だ!」
「良くぞ訊いて下さいました!!」
「え……」
 いつにない反応に、ロイドは戸惑ってしまった。
「……珍しい奴だな」
「初めての対応だね、ロイド」
 ゼロスとジーニアスも、他の皆も、呆気に取られていた。しかし、男はそんな事はお構い無しに、前口上を始めていた。
「その世に美と云うものがある限り、参上しますよ何処にでも」くるくると回転し、こちらに正面を向いたところで決めポーズ。「ビューティー男爵バイアス、只今見参!」
「びゅ、ビューティー男爵……?」
「ふふ。私のあまりにも華麗な口上に、言葉も無いようですね」
「そんな訳あるかっつーの!」
 ゼロスの突っ込みなど気にも留めず、バイアスは再び高笑いを始めた。
「……あの男」
「ビューティー男爵バイアスです!」
 ユアンの小さな声に、バイアスは敏感に反応して訂正した。正に地獄耳だ。
「……人間でもエルフでも、ハーフエルフでもないな。……魔族か?」
「魔族? ニブルヘイムにいた奴等や、トタウアと同じ?」
「ニブルヘイム? ああ。この世界に隣接していた、勇者に封印された二流魔王の統治していた魔界のことですか。そうです、私は魔族ですが……超一流です!」
「……あのリビングアーマーを二流扱いかよ」  禁書の記憶で戦ったリビングアーマーの実力を思い出し、少しぞっとした。この男は「バイアスです!」……バイアスは、その実力を知った上で、二流と呼んでいる。
「しかし、自分で自分を超一流とか言うなんて、いけ好かないヤツだねぇ」
「まるで、どっかの赤毛のアホ神子みたいだね」
「えぇ〜! 俺さまって、あんな感じか!?」
「ところで、男爵さん。何の御用ですか?」
「そうだな。我々をここに呼んだ要件を、手短に話してもらおうか」
「ちょっと、俺さまは無視?」
「ふふふ……素晴らしい!」
「リフィル、いい加減にしなよ! 今はそんなことをやってる場合じゃないだろ!」
「そんなこととはなんだ! この城の建築様式は……」
「徹底的に無視?」
「クラトス、どうにかしろ」
「……ジーニアス、ロイド、頼む。お前達の方が付き合いは長かろう」
「ロイドさん、ジーニアス、頑張ってください」
「そんなこと言われてもなぁ……」
「ロイド君まで〜」
 段々収拾が付かなくなってきた。それに伴って、バイアスは無視されていった。
 プチン。
「いい加減にしなっさぁぁぁい!! 私よりも目立つことなど許しません! プリニー!」
 バイアスの怒声に我に返ると、バイアスがペンギンを呼んでいるところだった。
「おいっす」「プリニーっす」
「彼女を運んで、他の場所を存分に見せて上げなさい!」
「了解っす!」
「運ぶっす!」
 2匹のペンギン――プリニーがリフィルを持ち上げて、何処かへと連れ去っていった。
「せ、先生!」
「ご安心を。この城の中を存分に見せてあげようというだけですから」
「では改めて、貴公の目的を教えてもらおうか?」
 リフィルが連れ去られて落ち着いたところで、リーガルが一歩前に進み出て、バイアスの目的を問い質した。全員、いつでも戦えるように身構えている。
「私の目的ですか? ふふ、いいでしょう。教えて差し上げましょう。私の目的は……目立つことです!!!」
『……は?』
 クラトスやユアン、プレセアでさえも、異口同音に、声を漏らした。バイアスはそんなことなど気にも留めずに続けた。
「貴方方はこの世界を崩壊の危機から救った英雄にして、2人は古代大戦の英雄でもあるというではありませんか! 加えて主人公でもある貴方方を倒せば、間違いなく目立ちます! さぁ、覚悟なさい!! 出でよプリニー!!」
 先程のペンギンが5体現れ、ロイド達の前に立ち塞がった。
「プリニーっす」
「どうもっす」
「よろしくっす」
「お手柔らかにっす」
「どうせ何処であろうと、こき使われる運命っす」
 なにやら悲観的なことを言っているが、ロイド達と戦おうとしているのは間違いないようだ。
「え、ええ!?」
「冗談じゃねぇぞ、おい!」
「奴等、来るぞ!」
「どーなってんだよぉぉ!?」
 ロイドの悲鳴も虚しく、彼らは問答無用で襲い掛かってきた。

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