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「なあ、あの二人って、なんですぐケンカするんだろうな」
ふとんの中にもぐりこんだロイドが、てんじょうをながめてぼやいた。
「・・・・・・それぞれの事情があるのだろう」
となりのベットにすわっているクラトスが、もくもくと剣の手入れをしながら言う。
クラトスの答えに満足できなかったロイドは、長いため息をついてとなりを見た。
「・・・・・・なあ。明日はパーティ代わってくれよ。あんたなら、なんかうまくやってくれそうだしな」
次の日のパーティは、プレセアを先頭に(リーガルも、いつの間にか交代していた)クラトス、しいな、リフィルのメンバーだった。
しいなとリフィルは、顔も合わせず、声をかけようともしない。
「お互いに、相手が頭を下げるのを待っているようです」
びみょうに距離(きょり)を置いた二人を見て、プレセアがつぶやいた。
「うむ・・・・・・しかし・・・・・・・」
仲たがいしているというよりは、ただ単に、お互いにもっと深いところまで入りこんで理解しあいたい。それが思い通りにいかないから かんしゃくを起こしているだけのように見えるクラトスは、しかし、言えば余計に事態が悪化するのは目に見えていたので、今の状態を見守るしかなかった。
「・・・・・・時が解決することもある・・・・・か」
「そうですね。必要なのは、時間の経過にともなう二人の経験の積み重ねだと思います。それ以外に、お互いを理解し、認める方法はないかと・・・・・」
プレセアがそこまで言ったところで、モンスターが群れをなしておそいかかってきた。
「行くよっ!」
前線を守るプレセアよりも早く、しいなが飛び出した。
「リフィル!援護(えんご)しておくれ!」
「何を言ってるの!私は回復を主に戦うってみんなで決めたところでしょう!?」
「うるさいなあ!今はそんなこと言ってる場合じゃないだろう?さっさとしとくれ!」
「お断りよ!」
「なんだって!?」
「私たちはチームを組んで戦っているのよ。一人で輪を乱そうとするあなたの行為を認めるわけにはいかないわ!」
「・・・・・おしゃべりによる集中力の低下。それによって発生する速度反応と判断力の鈍化を差し引いた私たちと、敵のスキルを比べると・・・・・今回は、苦戦すると予想されます」
「・・・・・・・・・・そうか」
プレセアの予想通り、今回の戦いは、暴走気味のしいなにペースを乱されたのか、リフィルもひん死の敵に上級魔法を使用してしまったり、回復呪文がクラトスとかぶってしまったりとむだな動きが多発して、結果は、ギリギリの勝利となった。
「・・・・・足、引っ張るんじゃないよ〜」
「あなたこそ・・・・・」
座りこんで立ち上がれない二人を見て、クラトスとプレセアがため息をついた。
「・・・・・・・・・・・・・・・50歩100歩だな・・」
「目くそ鼻くそを笑う・・・・・とも言います」
「あっ、ことわざか!?オレも知ってるぜ!ネコにごはん、ブタと心中ってやつだろ?」
オレンジグミを持って救援(きゅうえん)に来たロイドが、うれしそうに声をあげる。
「ロイドよ・・・・・おまえは、勉強が苦手にも限度があるぞ・・・・・・」
うつむいたクラトスをまったく気にする様子もなく、がははと笑ったロイドが、リフィルとしいなに言った。
「先生たちは女なんだからさ〜。無理して戦う必要ないんじゃねえの?オレやクラトスがいるんだしさ。さっきだって、戦ってるより、しゃべってる時間の方が長かったじゃねぇか。だからさ〜・・・・・!?」
クラトスがあわてて止めようとしたが、おそかった。
ロイドの暴言を耳にしたリフィルとしいなが、同時にものすごい顔をしてロイドをにらみつける。
「・・・・・・・・・・なんですって?聞き捨てならない発言ね」
「ロイドぉ〜・・・・・・あんたってやつは・・・・・・・・・・・・!!」
「え?え?な、・・・・・なんで?」
「・・・・・・・・・・・・・・・ロイドくん。軽はずみです」
アンナと父様-短いお話『しいなとリフィルの戦闘日記』 |