1、
「クラトスのやつ、おれたちを裏切ったんだ!!」
(裏切る・・・・・ねぇ・・・・・)
オレは、顔をまっ赤にしてどなりちらすロイドを見て、あきれずにはいられなかった。
(・・・・・どうやったら、信じられるわけよ?)
どこの誰かも知れない得体の知れない傭兵(ようへい)を、頭っから信じていたと言い切れるおまえがどうかしている。
(とんだ あほうだな・・・・・)
この世の中に、信じられるものなんか、あるものか。
そんなもん、あるわけがない。
たとえ、信じてみたとしても、それは、いつか必ず、手のひらを返すように裏切られ、消えてしまうもんだ。
(それが、世の中のお決まりごと・・・・・だろ?)
オレがそう言おうとした時、それまでじっとだまりこんでいたコレットが、目になみだをためてロイドのうでを引っぱった。
「ロイド!もうやめて!」
「・・・・・コレット?」
ロイドは、まさかコレットに いさめられるとは思っていなかったのか、おどろいた顔をして言葉を失った。
「ロイド、もう、やめよ。わたしたち、一度はクラトスさんを信じたじゃない」
「・・・・・ああ、そうさ。信じてた。それなのに、あいつは!!」
「ちがう!」
すっかり頭に血がのぼったロイドに、コレットが大きな声をあげて言った。
「わたしたち、信じたでしょ?だから、これからも信じようよ。クラトスさんがすることを!」
・・・・・おいおい、なに言ってんだよ。意味わかんねぇよ。
あきれて物が言えなくなったオレの前で、コレットは、顔を赤くしてこぶしをにぎりしめた。
「クラトスさんには、きっと、クラトスさんの考えがあるんだよ。それが、たまたま、わたしたちの考えとちがっただけ。ロイドは裏切ったって言うけど、わたしは、そうは思わない。だって、クラトスさん、いっぱい助けてくれたじゃない」
「・・・・・それは、そうだけどよ・・・・・」
ロイドは、かたを落としてコレットを見ている。
・・・・・言いくるめられてやんの。本当、めでたいガキだぜ・・・・・・・
コレットは、ますます顔を赤くして言った。
「わたしね、クラトスさんが、自分で決めてやったことなら、裏切ったとは思わないよ。・・・・・裏切るっていうのは、いっしょにいるけど、無理して、自分の心にウソをついてるってコトなんじゃないかな?」
「・・・・・・・・・・・!!」
いっしょにいるけど・・・・・・・・・・・・・・・・?
・・・・・・・・・・・・言ってくれるじゃねぇか。
シルヴァラントの神子さまよ。
じゃあ、オレは、なんだ?
オレのやっていることは?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
裏切る・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・か。
おまえたち、ほんっと、めでたいバカやろうだぜ・・・・・
アンナと父様-短いお話『行く道先に咲く花』 |