トリエット砂漠にて〜ロイド

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コレットたちが砂漠のオアシス、トリエットを出発してから、すでに半日以上がすぎていた。オサ山道をこえて東へ向かうために歩いているのだが、なにしろ、ノイシュとクラトス以外の全員が、砂漠はおろか、長旅をしたことのないメンバーなのだ。

護衛(ごえい)とはいえ、クラトスの気苦労はつきなかった。


「神子、暑いからといってフードをおろしてはいかん。体力がどんどんなくなって、後でバテるぞ」

「あ・・・・・すいません」

「リフィル。少し歩くペースが速いのではないか?砂漠は、砂に足をとられて平地をゆくより困難だ。長い旅になるのだから、ゆっくり歩くのだ」

「・・・・・そうね。あなたの言う通りだわ」

「ジーニアス。ついて来れるか?」

「・・・・・うん。まだ、だいじょうぶ」

クラトスは、まわりの様子をうかがいながら、数分に一度は、一言、二言、声をかけていた。なにしろ砂漠の上を歩いているのだ。じりじりと照りつける日差しは痛いぐらいに強く、ふく風も熱くて、旅になれないコレットたちに向いている道のりとはとても思えなかった。

しかし、この砂漠をこえる以外に道はないのだ。

クラトスは、思いやられる先の心配をふりきろうと小さく息をはいて・・・・・ちらりと後ろを見た。

さく・・・・・さく・・・・・

ゆっくりと砂をふむ音が聞こえる。そのテンポはバラバラで、ずるずると何かをひきずる音もまじっていた。それが、どんどんクラトスの耳から遠ざかっていく。

クラトスは、とうとう深い息をはいて立ち止まると、ふり返って言った。

「ロイド。これぐらいでバテてどうする?これでは、先が思いやられるな」

「・・・・・う・・・・・うるへ〜・・・・・」

ぜえぜえと荒い息をつきながら、今にもたおれそうなロイドがクラトスをにらんだ。

「ロイドったら、だらしないなぁ。だから言ったじゃん。最初にはしゃぎすぎない方がいいよって!」

クラトスの先を歩くジーニアスが、あきれた口調で言った。

ジーニアスの横でノイシュに乗っているコレットが、ノイシュの背中から落ちそうなぐらい大きくのけぞってロイドを見た。

「ロイド!だいじょぶ?きゅうけいする?」

「ふははは・・・・・だ、だいじょ〜ぶ・・・・・だ・・・・・だけど・・・・・目が、ちかちかして、前がよく見えね〜よ・・・・・」

ロイドが目をごしごしとこすると、それまでどこかあきれた様子で見ていたクラトスが、あわててロイドにかけよった。

「ロイド!目をこすってはいかん!」

「・・・・・ってえ!!!」

こまかい砂が入った かわいた目をこすったのだ。悲鳴をあげたロイドは、両手で目をおおってしゃがみこんだ。

クラトスは、ロイドのわきに片方のひざをついてこしをおろすと、ロイドの手に自分の手をかざした。

「・・・・・ファーストエイド!」

いやしの魔法をかけてもらったロイドが、ほっとため息をついた。

クラトスは、自分のこしから水の入った皮ぶくろを取りだして、ロイドに目を洗い流すように教えた。そして、開かない目でなんとかしようとするロイドをサポートしてやる。

「かは〜っ!気持ちイイぜ〜!」

砂を洗い流したロイドが、そっと目を開けた。

「・・・・・無事か?」

クラトスは、開いたロイドの瞳に自分の姿を映っているのを確かめると、やれやれとため息をついた。

ロイドは、じっとクラトスを見て、それから、まわりを見ると、顔をゆがめて、また目をとじてしまった。

「うわあ!まだ目がチカチカするぜ!なんだこれ〜!!!」

「・・・・・お前には、記憶力というものがないのか?」

クラトスは かすかにまゆをよせると、ロイドのうでを持って立ち上がらせながら説明した。

「砂漠に入る前に何度も話しただろう?砂漠の砂に反射した光で目をやられないよう、気をつけて歩けと・・・・・」

「・・・・・?きっ、聞いてたよ!わすれただけだ!」

「・・・・・・・・・・・」

クラトスは、それ以上なにも言わず、ロイドに背を向けた。

そして、そのまま、たんたんと言う。

「・・・・・私の影を見て歩けばよい。しっかりついて来い」

「・・・・・・・・・・・ああ。ありがとう。あんた、イイやつだったんだな!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

明るく笑って言うロイドに答えず、クラトスは、行くぞ、と、一言もらした。

そして、一行は、再び歩き始めた。

オサ山道を目指して。




20041208

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